サガステ感想。これぞリアル・ロックブーケ! あのテンプテーションは回避不能だった、の話

今日はサガステのロックブーケの話をさせてください。

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いきなりですが、サガステのロックブーケロマサガ22.5次元化にあたってもっとも再現が難しかったキャラクターではないでしょうか。ノエルの最愛の妹であり、エイルネップ地方に君臨する女王でもある。男性キャラからは女神のごとく崇拝され、女性キャラからは最悪の敵として憎まれる。おなじ一つのキャラクターなのに、すこし視点をかえるだけで正反対の見え方をしてしまうという多面的な魅力をもっているのがロックブーケです。そのため、プレイヤー一人一人にとってのロックブーケ観みたいなものが千差万別で、しかも七英雄の紅一点という人気アイドル性も重なりあい「俺のなかのロックブーケ」「私にとってのロックブーケ」がバラバラでありながら強固にある。そんな、めんどくさいファンをかかえまくっているに違いない本作最大級の難役ロックブーケでしたが、サガステスタッフは、そして役者・山田菜々さんはこれ以上ないくらいのパーフェクトな「リアルロックブーケ」を創出してくれました。

その素晴らしさを讃えて、全力でサガステロックブーケの魅力を分析していきます。

妹か、魔性の女王か

ロックブーケを形作るにあたり避けては通れない二者択一。

それは、妹としてのキャラを立てるか、魔性の女としてのキャラを立てるか。

サガステスタッフにはこのどちらかにはっきりと舵を取り、純度の高いロックブーケを提示しようという意図があったはずです。もちろんその両立をめざし、男にかたっぱしから媚を売るコケティッシュな妹という描き方も不可能ではなかったはず。しかしサガステはそういうことはしませんでした。

結果、サガステのロックブーケは「妹キャラ」になりました。

小悪魔系のキュートで健気な妹としてロックブーケをキャラ立てする。

サガステスタッフはどうやら「あいだをとる」「バランス型にする」という見せ方は極力採用しないようにしているのではないでしょうか。

AかBか? 選んだら後悔しない

ロマサガ2という原作の枠のなかで分岐点があれば、それをきちんと選択する。なぜなら、それこそがロマサガのもつフリーシナリオシステムの理念につながるから。悪なら悪に。妹なら妹に。AかBか、くっきりと二分する選択肢ならそのどちらかを選ぶことに責任をもち、決して後悔しない。後悔しないために、その選択を鑑賞者から間違いだったと言われなくなるほどのクオリティに高めてみせる。出来で納得させてみせる。それが、サガステの台本、キャラデザイン、そして演出の狙いであるように思えるのです。


 


6:3:1のロックブーケ

「妹」としてキャラを立てていくにあたり、そこからは「どんな妹にするか?」というキャラクターデザイン上の課題が見えてきます。サガステが私たちに見せてくれたロックブーケは、丁寧に計算されたバランス配分の上に成り立っているキャラクターだと思いました。「他の七英雄との関係性におけるバランス配分」とでも言いましょうか。順を追って説明します。

ノエルとの関係性

サガステのロックブーケのふるまいをよくよく観察すると、その行動原理の中心にあるのはいつもノエルへの愛でした。敬愛する兄への憧れ。背中を追いかける挑戦者としての妹。

本当の兄妹でも往々にしてそのような関係性は実在します。とくに10歳以上年齢のはなれた兄妹間で見られますよね。兄と言うよりは父としての役割、保護者としてのまなざしをもってしまっている兄と、それを克服しようと同じ方向性で努力を重ねてしまう妹。そこにあるのは、ある種の近親相姦めいた、お互いを好きすぎる兄妹の姿です。家族愛というには歪んでおり、兄妹愛というよりは師弟関係に近い。「この関係性って尊いけど、少数派すぎね?」みたいなニッチで、でもたしかにエモい、特別なノエルと特別なロックブーケがサガステの舞台上に表現されました。

ワグナスへの恋慕

彼女を形作る構成要素の6割をノエルが占めているとすると、その半分くらいの大きさで「ワグナス様をお慕いする乙女なロックブーケ」もいましたね。

これがね、もう、めっちゃめちゃ可愛い! 可愛い! 可愛い!!!!!

ロックブーケ、可愛い。ワグナスを乙女な視線で見つめるロックブーケは、たまらなく可愛いんです。しかも素晴らしいことに、ワグナスに恋するロックブーケには、なんら嫌味がない。第一にサガステのワグナスは格好いい。あれほど格好いいんだから、好きになっちゃうことになんら疑問がわかない。男から見ても惚れるもん。あんなん、ロックブーケだって好きになっちゃっても不思議がないよね。おかげで、客席からワグナスに惚れちゃってる全観客と舞台の上のロックブーケの気持ちがシンクロするよね。私、男だけどロックブーケの気持ちにすごい共感できました。劇場を一体化するのに、ロックブーケの恋する視線というのは大切な役割を果たしていたと思います。

クジンシーとの向き合い方

で。あれ?6割のノエルと、その半分、3割のワグナス。10割に足りない!というね。じゃあ、あと1割なんだ?「他の七英雄との関係性におけるバランス配分」でいうところの10%って誰なんだ? 

それは、クジンシーです。

私は、今回のサガステ・ロックブーケがどうして魅力的に見えるのかと考えたとき、ふと思い当たりました。クジンシーとの独特の向き合い方が、彼女の存在感にリアルさをプラスしているのではないかと。クジンシーを虫けらのようにあしらう。クジンシーをいないもの扱いする。クジンシーの恋慕にこたえない。クジンシーロックブーケの関係性とはつまり「ストーカーへの生理的嫌悪と心理的な抵抗感」に他ならず、これを彼女を為す一要素として随所で見せていくことで、ロックブーケの「どこにでもいそうな等身大の女の子」感を出すことに成功しているように思えました。

6割のノエルへの愛。3割のワグナスへの恋。1割のクジンシーへの生理的嫌悪。これらが矛盾なく一個のロックブーケを成り立たせている。愛と、恋と、あどけない拒絶。それらが乙女チックな妹を成立させている。ここにいるのは、等身大で、魅力的な新しいキャラクター。だから誰も見たことがないはずなのに、誰からも文句のつけようのない、パーフェクトで最高なロックブーケになっていたのだと、そう感じました。

三次元的テンプテーション

ロックブーケ語りはまだ続きます。

サガステには本当にいくつもいくつも見所かあるのですが、お気にいりのシーンを3つあげろといわれたら迷わず「ロックブーケの戦闘シーン」を推します。あのテンプテーションは本当にすごかった。

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いや、ほんと。あれ、めっちゃ可愛くなかったですか!? 

ピンクの照明と、魅惑のロリ声。

戦闘の動きを維持しながら朗々と歌われる甘くおそろしいミュージカル。

可愛い。ものっすごい可愛い。

キュンキュンしちゃう。

ドキドキして、もうロックブーケのことしか見えない。
(でも魅了されダンサーズは目立ってたw)

ロックブーケに視線が釘付け。萌える。やばい、萌える。

動きがいい。可愛い。動きが可愛い。

声も可愛い。

肩から指先までの身体の動かし方が、まさしくゲーム画面通りの戦闘モーションで再現度すさまじいですし。

可愛いのに、歌の内容は怖い。

男というむしけらを突き放して高いところから見やる、女王様の上から目線。

力と力でしのぎをけずる他の七英雄とちがって、ロックブーケは皇帝に「死」を命じる。

その冷淡な断絶が。拒絶が。

ゾクゾクするほど蠱惑的で、可愛い。

あと、付け加えて言うなら可愛い。
ついでに言うと可愛い。
声を大にして言いたい究極の本質的な主張は…………とにかく可愛い!

なお、原作ゲーム未見派の方のために補足しますが、ゲームでのロックブーケは「テンプテーション」という必殺技を使う強敵ボスです。出会うタイミングによっては、お兄様より強い場合すらあります。

テンプテーションとは、「男性キャラクターにのみ100%効果があり、それをうけるとロックブーケの味方になって仲間を攻撃しはじめる」という強烈な技です。男であるかぎり誰もロックブーケ様の魅力にはあらがえない。どんな皇帝だろうとメロメロになってしまうということを表した恐ろしい戦闘方法です。対策方法は2つあり、ひとつは女性キャラクターだけで5人パーティーを組むこと。そしてもうひとつは「霧隠れ」という水術をつかって「こちらから攻撃しないかぎり敵からのほとんどの攻撃・効果を無効化できる」状態で、テンプテーションを見切るまでじっとしているかどうか、そのどちらかです。

で、その知識を得た上でロックブーケの戦闘シーンを思いだしてみてください。一度でも胸キュンしなかったと言えますか?ちょっぴりでも可愛いと思ってしまっていませんか?そんなことないですよね?めっちゃ可愛かったですし、悶絶級でしたし、メロメロでしたよね。そう。で、あるならば!!!! 気をつけてください!!!!

テンプテーションにかかってる可能性があります!!!!!!!

見る者を魅了し、問答無用で恋の奴隷にしてしまう強烈な必殺技テンプテーション。ロックブーケがそれを発動したとき、可愛いと思ったら。美しいと思ったら。チャーミングだと思ってしまったら。それはもう、テンプテーションにまんまとかかっています。あれを避けるのは正直無理ゲーだったと思います。年末恒例の笑ってはいけない24時を、本当に笑わないで見続ける縛りみたいなものです。あのロックブーケにときめいたら、デデーン♪ ダークスフィア~(タイキック~みたいなノリで)。可愛いと思ったら即敗北。無理無理。だって可愛すぎるもん。めちゃ可愛い。

キャスティング有能

ていうか、ガチの元アイドル連れてきたらダメだって。そりゃ可愛いよ。山田菜々さん。あんなの凶器だって。キャスティング優秀すぎかよ。

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なにしろ暴力的な可愛さ。だからテンプテーションの驚異を知っているロマサガ原作勢からすると、ときめいたらゲームオーバーだって知ってるからね、もう超怖い。可愛いのに怖い。可愛ければ可愛いほど、ふるえあがる気持ちなんです。

「ホラー」からの、全滅必至「召雷」連発凶悪ロックブーケ様の恐ろしさがまざまざとよみがえってきて、もうね、脳が混乱するんです。可愛さと恐怖がすさまじい勢いで神経をおかす、ヤバイ性質の気持ちよさ。

ゲームのなかの絵空事だったテンプテーションが!

サガステという舞台の上で山田菜々さんという身体を得て発動し!

客席に座る皇帝という皇帝たち皆に、マジのテンプテーションをしかけてきたとしか思えない。

あのテンプテーションは、舞台を越えて、客席全体にあまねく広がり、ついには性別さえ越えて魅了しまくった猛烈な真テンプテーションだったと思う今日この頃です。

あ~~~~、もう一回観たいなぁ。

次観るなら、もう抵抗をやめてさ。

はじめから奴隷になるつもりで心をゆだねるよ。

ロックブーケ様、万歳!

サガステ、万歳!

というわけで、サガステ最高でしたし、

ロックブーケ、超最高でした。