【サガステ】クジンシーの「笑顔」に見る、七英雄の業。
とりあえず、ステータス的には大阪公演の大千穐楽まで終了している現在ですので、すみませんがネタバレ解禁で感想を書いていきます。
★★★★★★★★★★★以下、ネタバレ★★★★★★★★★★★★★
※DVDまでまだ観られない!という方はページを閉じてください><
続けます。
まず、ね!
ロマサガ2勢からするとクジンシーってあそこまでお調子者キャラじゃなかったはずなんです。たしかにそういう面はあるけど、一幕は正直、観ていて不安になるようなギャグキャラ感がありました。場を温めるコメディリリーフ(シリアスな物語をやわらげるための役回り)として、ロマサガ2原作派としては見たことがない姿が表現されていました。
なので、最初は本当にこのキャラ大丈夫なの? とか思ってました。
私の知ってるクジンシーと違うんだけど。
語られざる前日譚っていったって、さすがに改変すぎじゃね?
「嫌われもののクジンシー」じゃなくて、
「嫌われてたどころか空気扱いのクジンシー」なんだけど、
おいおい、原作ファンをがっかりさせんなよ~~~!?
とか思ってたんですけど…………
さあっっせんでした!!!!
すいません、すいません!!!!
フライング焼き土下座!!!!!!
なめてました。
もうね、最高。
最 & 高 !
クジンシー、エモい。
エモいし、えーーーー、なんというか、
……………………エロい?
そう、色気がすさまじかった!
男の私でも、あのクジンシーのほっそりとした首筋とか、
ゾクッとするもんね。
幼馴染みがヤクザになって再会するみたいな切なさ
しかもね、まさか、二幕で出てきた瞬間に、涙腺やられるとは思ってませんでしたから。
なんというか、落差にやられてしまったんだと思います。
ギャグ要員からの、狂った暴の化身へ転じた、高い落差。
あれはずるい。
サガステによって「語られざる物語」が明かされた一方で、七英雄が強制転移させられてからの数千年間はやはり謎のままなんです。で、その物語上の余白にこめられた「膨大な時間」や「過酷な経験」が、きっとクジンシーを変えてしまった。そういう解釈は容易にできると思います。
あんなにもおちゃらけで、
あんなにも必死で、
あんなにも「何者でもなかった」彼が、
あれほどに凄惨な、
あれほどに凶悪な、
あれほどに吹っ切れた、
無法の破壊者のたたずまいを身につけてしまった。
要するに、
小学校まではどこにでもいる幼なじみだったのに、成人式でひさしぶりに再会した友達がごりごりの武闘派ヤクザ(前科2犯)だった。みたいな。ね。
あー、それはちょっと違うか!
でも、エモい。そういうの大好物です。
物語の味わいとは、つまるところ人間の感情にどんな変化があるかを見届けること。
時が流れていくなかで、否応なく変わってしまう人格のはかなさ。
その無情。
いまが永遠に続いてほしいとどれほど願っても、
その願いの瞬間さえ一秒後には過去になっている悲しさ。
それが数千年。
あらがえない変化。
受け入れるしかない絶望。
それでも、六人についていくしかなかった道。
引き返せない異世界。
アイデンティティの喪失。
自分が何者かも分からなくなる旅の果ての果て。
それを。
二幕。
ただ、「あやしく嗤(わら)っている」という芝居で。
見事に! 見事に! 見事に!
表現しきっていたと感じました。
善性を失い、悪に染まり、武力を得て。
深い絶望を経た者だけがたたえられる笑顔の美しさ。
控えめに言って、超最高でしたね。
変わらない者の異常さをかえって浮き彫りにする
クジンシーの舞台上の役割は、もうひとつありました。
クジンシーをまるで別人のように変化させた「地獄」の日々を、しかし他の六人も経験しているはずなのです。ところが、彼ほどまでに大きな変化をした者はいないという事実に行き当たります。で。
それってむしろ、異常じゃない?と。
変わらずにいた者たちの執念の深さ。
想いの強さ。
決意の深刻さ。
その異常さを、クジンシーはかえって浮き彫りにさせます。
前述したように、クジンシーは何者でもありませんでした。
何者でもない、ただふつうの男。
ワグナスに呼ばれていなかった奴。
その場にいあわせた、英雄未満のエキストラ。
彼には、国民を救う信念はなかった。
傭兵としての自信も誇るべき生き様もなかった。
兄様を慕う情念もない。
世界を滅びから救う使命もない。
高名なる神官様に見出された自尊心もない。
ないないづくしのクジンシーは、ただ「何者か」になりたかった。
何者でもない、ただのふつうの、古代人のひとりにすぎなかった。
必然、数千年の復讐の旅でアイデンティティを損なうことでしょう。
ふつうの男が、七英雄としての自我を掲げ続けられるわけがない。
変化してあたりまえ。
狂ってあたりまえ。
正体を失うことこそ、逆説的に正常なはずなのです。
ところが、ワグナスは。ノエルは。ロックブーケは。
数千年間、魔物を吸収して生きながらえ、それでもなお当初の目標を保ち続けている。その、ありえないほどの執念。正常であるということの狂気性は、もしかするとクジンシーのそれを凌駕しているのかもしれません。
そのことを二幕の限られた出番のなかで余すことなく伝えきる。
これは相当な演技力がなくては不可能なことです。
台本をなぞるだけでは決して実現しえない、迫真。真実味。
クジンシーの余白全部を舞台上に表出せしめる深い深い芝居でなければ見えてこなかった、七英雄の業。
本当に、本当に、素晴らしいクジンシーでした。
あとね、あとね! 衣装もめちゃ良かったよね!!
ルックス的には今回いちばん個人的に刺さったのもあって、V系っぽい感じそそるよね、ってのもあって、クジンシーめちゃめちゃ好きになりました。
D・V・D!
D・V・D!
D・V・D!
はよはよ、楽しみですなーーー!
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