【サガステ】平山佳延のスービエ。愛で生まれ変わり慟哭と共に壊れていった海の王者。
サガステの七英雄語り、今回はいよいよスービエ編です。
この記事をずっと書きたかった!
正直、こんなすごい役者さんがいたのか!という発見でした。スービエの迫真の演技。素晴らしかったです。
さて。例によって例のごとく、ステータス的には大阪公演大千穐楽まで終了現在ですので、ここからはネタバレ解禁で感想を書いていきます。
★★★★★★★★★★★以下、ネタバレ★★★★★★★★★★★★★
※DVDまでまだ観られない!という方はページを閉じてください><
スービエのことを語るのは、とてもとても難しいです。
勇気がいる、とも言えます。
未知のものを語るための、話者の態度の問題。
自分はこのスービエに対してなにを想えばいいのか。
それがそもそもむずかしい。
なぜかというと、ロマサガ2ファン勢からしたらサガステ七英雄で新たに与えられた「設定」レベルでの最大の変更は、このスービエに集約されるからです。
要するに、知らない人なんです。
原作の文脈からスービエを見ると、正直、知らない人でした。
なにしろ、原作におけるスービエって、情報がほぼ無いに等しいんです。てか、そもそも会えない! こいつだけ出現条件の管理がきびしくて、よく考えずにストーリーをすすめていると遭遇するチャンスがないまま最後の一人になっちゃうパターンもありえる。戦いにいけるのはあとワグナスとノエルしかいなくて、沈没船イベント発生してない&氷海にいくルートがないからスービエにはまだ会えなくて、みたいな。(私が下手なだけかもw)てか、「ワグナスのいとこ」としか説明されないしね。性格じゃないじゃん!
一応、スービエも沈没船バトルで「いなくなった古代人を探している。復讐のために」的なこと言っているので、魚類・水棲タイプモンスターと同化して海底の遺跡を探索していたのかもしれません。その発言を真とするなら、彼もまた数千年の復讐心を捨てなかった執念の魔物ではあるのですね。
ひるがえって、サガステのスービエは。
クジンシーとはまた違った意味で、大きな変化を経たキャラクターになりました。
クジンシーは「数千年の地獄で狂気した」いかにも素直な「変化」です。作品における壮絶な時間経過の悲哀を、クジンシーは一身にうけて表現していました。
また、変化ということでいえば、ボクオーンは「変化に抗おうとして狂気と正気のはざまでゆらぐ」というクジンシーとは相対的な見せ方をしていますね。変化の強度に差をつけることで、追放前の「心の強さ」に個性付けをしようとする脚本上の工夫だと感じました。七英雄ひとりひとりに役割があり、それらがグラデーションを成している。こういう細かい部分の作り込みが、サガステは本当にすばらしい。
で、スービエです。
彼は、クジンシーやボクオーンとはまた違う、別の種類の変化をみせます。それも2度。
一度目の変化。
それは愛です。
スービエは「愛を知って生まれ変わった」。
とても、ドラマチックな変化でした。
人妻といくらでも寝て、浮名をながし、いつ果てるともしれぬ戦場で舞うように生身を晒す無頼漢。
数千年の地獄のなかでもすり切れなかった強靭な精神の持ち主。
クセになる声と、眼の開き方まで自在に駆使して醸し出させるカブキ者の余裕風。
かっこいい。ほんとにかっこいいスービエです。
笑顔もいいんです。チャーミング。
追放の前後で、そのあっけらかんとした爽やかな笑顔は同じ質を保っていましたね。
で、変化の話は二幕。
舞台は現代へ。
皮肉にも、こここそが、追放の前の世界。旅の果て。ようやく戻ってきた。
当時の人間はすでに逃げて消え去ったが、あとは手がかりを探して追いかけるだけ。
ゴールは見えた。もう一歩。あとすこし。
ついに七英雄はここまできた。
そんな、執念と憎悪の英雄譚をすべて洗い流してしまった、リルとの恋。
リルと出会えた。
愛を知った。
スービエは変わった。
生まれ変わってしまった。
愛を知り、生き方を変えた。
かーーーらーーーーのーーーーー
死別!
幸福からのギャップ。振り幅!
そりゃあさ!
ああなるよ!!!!
大号泣だよ!!!!!!
嗚咽だよ!
慟哭とは、こういうお芝居だよ、っていうお手本みたいなリアリティ!
ゆ~~~る~~~さ~~~ん~~ぞ~~~~~!!!
だよ!
てか、スービエのリルへの愛が深すぎなんじゃよ!
数千年の悲願を捨てて恋に落ちるとか。
どこの皇帝だ!!!!
……
………………
どこの皇帝だ?
……………………ん?
……あれ?
いや、いや!
あああああああああああああ!
そうか!
て、書いてて気づいた!
いま気がついた! ひらめいた!(ピコーン!)
要はさ、これさ、あれだよね!
南ロンギットのマーメイドイベントのエッセンスを再現しようとしてるよね!!
ロマサガ2には「マーメイドとの熱愛逃避行」という異色のイベントがありまして。
全イベント中、最大級にロマンチックなラブのイベントです。
海の底で歌い、踊り、愛しあう。
あの記憶に焼き付いて離れない印象的な一幕。
原作未見派の方のためにかんたんに説明しますと、冒険の中盤以降で「マーメイド」という町にいくと発生するイベントがあるんです。
で、
「夜にだけ酒場に現れる踊り子に3回会いにいく」
↓
「実は彼女が伝説の人魚であることを知る」
↓
「彼女を追いかけたくて世界中を冒険して人魚の薬を手に入れてくる」
↓
「海の底に会いにいく」
↓
「もう一度会いにいく」
↓
「ただし人魚の薬は3回つかうと陸にもどれなくなる」
↓
「それでも会いたい。3回目だけど、会いにいく!」
とやってしまうと、なんとなんと、その時プレイしていた皇帝は強制的に寿命扱いとなって冒険から離脱することになるのです。さらに余談ですが、これを最終皇帝(男)でやらかすと正真正銘のゲームオーバーになります。つまり、歴代皇帝がつないできた意思と悲願の継承バトンは、ある一代の皇帝の情熱的な恋によって断絶してしまう、というとんでもイベント!(笑) 国家を背負って立つ者の責任w まあ、直前にセーブデータを分けておけば大丈夫なんですけど。こういうことも可能な、フリーシナリオシステムの面白さですね。
で、で、これをふまえてですね。
スービエはリルを通して、要は「主人公」になってたというわけですな。
紡いできたすべてを。
その時の仲間を。
いまのLPを。
ぜんぶ無しにして自分からゲームオーバーを選ぶ恋。
あのロマンシングサガ最大のロマンチックで破滅的な純愛。
あ、もしかして、もしかして、
スービエとリルの二人パートって、全部で3回なんじゃない!?
人魚に3回会いにいったからゲームオーバーになったんじゃない……?偶然?
す、すげえええええええ、、、
サガステ、すげええええええ
計算されつくしてる!!!
原作の面白いエピソードを、ほんとにあまさず、無駄なく、魅せているっ!!
いやあ、本当にサガステは最高ですね。
こうして思い出しながらまた色んな発見があるしそのことごとくが、ほげええええ、って感心しちゃう。
まあね、
言うてもね、
私は大変なへそまがりですのでね、
二幕のスービエとリルのエピソードのことなんか絶対くわしく書きたくないですけどね!
あんな見え見えの泣けるエピソードぶっ込まれて、
もともと真っ白なキャンバスだったスービエのキャラ設定に、
そんなあからさまな悲恋の主人公属性を付け足しされちゃっても、まあね、
そりゃ泣くよね、あたりまえだよね、狙いどおりだよね、とか思うんですけど、
そんなんで往年のロマサガ2ファンが泣くとでも思ってるんですか?みたいな。
泣くもんか!てな具合にね。
泣かない、泣かないぞ、って心に決めて観てたんですけどね。
まあ、
クソ泣いてたんですけど!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ふぁおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、おんおんおんおん、
そりゃ、泣くよ。泣くよ!泣く、泣くよ、泣かせてよ!!!!
あのスービエのお芝居で、心を動かされない人なんているの!????
だってさ、
殺陣に込められた殺意!
すごくない?
震える。ほんとに怖い。
あの殺陣。マジで殺そうとしてるって。
あー、ほらソウジ死んだね(あ、生きてた)
あの槍。グッサー!角度えげつねえ!
あー、ソウジ離脱か~。(お、おお、踏みとどまった)
ほらー、メイルシュトローム。
ねー、ソウジ逝ったわ~。(あ、LPバグってる!?)
とまあ、ソウジ関連で別の意味でハラハラドキドキしまくりましたけど、スービエの放つガチ殺気が怖ければ怖いほど、失ったリルへの情念が想起されてね、もうね、尊いし、しんどいし、泣けて泣けて、もうね、呼吸つらいよ!さすが海の王だよ、酸欠になるよ!
てな感じでした。
私は、演技のことはくわしく分からないけど、スービエのお芝居は虚構をはみ出してた気がします。まるで真実に見えました。
役者さん、平山佳延さんとおっしゃるのですね。
役への入り込み方がすごかった。
設定すらなかったはずのスービエに、たしかな輪郭を与えた名演技でした。
毎日毎日、一生一度の恋をして、人生が壊れるほどの死別を経験する。
そんな役にあれほど深い憑依型の演技で挑むことには、相当の困難と恐怖があったのではないかと想像します。にもかかわらず、公演中は一秒たりともそんなことを感じなかったんです。役者の苦しみとか、葛藤とか、そういう余計なことをまるで匂わせない。芝居なんかしてないようにしか見えない芝居という、すごく高い次元の芸を見せてもらった思いです。
スービエがいたから、サガステは生命力を得た。舞台が生き生きとした。
板の上に、一個の人生が立ちあらわれ、慟哭とともに消えていく。
それは一生。泣いた男の生涯。
数千年の魂の終着点。
すさまじいものを魅せられました。
つくづく思うのは、サガステは演技力もすごい。
すばらしいシナリオに、すばらしいパフォーマンス。
この舞台は伝説になる。
スービエは、その気持ちを確信にさせてくれる存在でした。
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