【サガステ】妖精と科学の探究者、ワグナス。なぜ一幕の悲劇に繋がったか?

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サガステの七英雄語り、いよいよ大トリ、ラストはリーダーのワグナスについてです。 

 

ちなみに、サガステのいくつもある「見所」のなかでも、特にこれこそは!という全体を象徴するものは、個人的にはワグナスだと思っています。

 

うちのブログではじめてサガステのことを書いたのがこの記事なのですが、そこでもワグナスに心を打たれた、当時の自分の気持ちが残っています。

たしかにそうなんです。ワグナスは素晴らしかった。本当に、本当に、本当に、素晴らしいワグナスでした。

 

さて、さて。

例によって例のごとく、大千穐楽はすでにすんでおりますので、以下ネタバレ解禁のワグナス感想です。どうぞー。

 

★★★★★★★★★★★以下、ネタバレ★★★★★★★★★★★★★

※DVDまでまだ観られない!という方はページを閉じてください><

 

 

 

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いやあ、しかしねえ。

サガステワグナス、本当にすごかったですね。

語彙という語彙が吹き飛ぶ、すさまじいキャラクターでした。

 

原作ワグナスのもつミステリアスな雰囲気もぷんぷん醸しておりましたし、とにかくかっこいい。リーダーってのはこういう男をいうんだろうな、というね。

 

話はいきなり脱線しますけど、日韓台合同のアイドルグループ「TWICE」さんの話。リーダのジヒョちゃんは、プロデューサーから彼女のリーダーとして資質を見込まれてリーダーに就任したという経緯があるそうです。

TWICEという大成功したアイドルグループのリーダーに求められる資質。それは謙虚であること。リーダーたるもの、人を押しのけて前に出てはいけない。チームメイトを前に押し出して輝かせるために、自分があえて一歩後ろにさがる気持ちを持ち続けられる者だけが、TWICEのリーダーになれる。

つまり、優れたリーダーとは、仲間のために犠牲になれる人のこと、なのだとか。

 

さて、ワグナスです。

彼ほど「自己犠牲」という言葉が似合う男はいませんでした。

天地変動の兆しをうけて、国家存亡の大プロジェクトを任されている若き神官。星を読み、魔物を討ち、宮廷の政治闘争にも身を置きながら、恋を捨て、友情と距離をとり、人間であることをやめてまで人々を救おうとした。そして最後には、抗いもせずに処刑場へむかう。それは渇いた諦めからではなく、自分が消えることで多くの人が救われると確信していたからのことでしょう。

さながら、聖人のごとき生き様。凛々しく、正義にあつく、理想を高くかかげる、本物の善なる勇者がそこにいました。

 

でも、ちょっと待ってください。

 

本当にそうでしょうか……?

 

もしかしたら、ひょっとすると、

 

ワグナスは全部分かってやっていたことだったんじゃないか?

 

みたいな、半分妄想まじりの考えが浮かんでしまったので書いていきます。

 

キーワードは「誤算」です。

 

ワグナスが悲劇に行き当たるまでの3つの誤算とは?

 

それを読み解くことが、ワグナスというキャラクターをより深く理解する手がかりになるのではないかと、考察しました。

 

実験者ワグナス

ワグナスは天才です。

頭脳派で、知恵が回る男。

優れた計画と、ゆたかな知識で、未来予知にかぎりなく近い将来分析ができる、そんなキャラクターとして描かれていました。あの世界で天体の配置から読み取れることは、おそらく単なるオカルトめいた吉凶占いだけではなく、数学、物理、科学を総合したオーバーテクノロジーの類でしょう。サグザーは時空間の分野に長じ、ワグナスはその知能と研究を世界滅亡の阻止という方向に傾けた、いわば神職という名の科学研究者であったのではないかと想像します。

私はつい「神官と呼ばれてはいるけど、実際は研究者や学者なんだろうな」と感じてしまったのです。

 

で。

そんなワグナスは、科学の徒としての考えをもった人物だとすると。まったく新しい未知の技術を前にして、きちんと実験をしなければならないという気持ちになったのではないでしょうか。

 

たとえば、吸収法は安全なのか?

 

たとえば、次元転移は無事に機能するのか?

 

一方で、彼は他者に犠牲を強いることを良しとしない自己犠牲の性格ももっています。

だからそうした新技術にたいする実験の初期において、きっとワグナスはこう考えてしまった。「まず自分の体に試そう。ほかならぬ自分自身が実験体となろう」と。

 

だから魔物を吸収することになるのは、必然でした。実験者として、どうしても自分自身で参加しなければならない、ある種の使命感があったのではないかと、そう思うんです。

 

しかし、そこからいくつかの誤算があります。

第一の誤算は、妖精系モンスターを吸収した影響です。

ワグナスは原作において、妖精系モンスターのシンボルにそっくりな見た目をしています。彼はおそらく妖精・エレメンタル系の魔物を喰らい、純然たる魔力をその身に宿すことで術法の強化を図ろうとしたのでしょう。ところが、妖精とは、すなわち人間をたぶらかす者です。誘い、まどわし、もてあそび、いたずらをしかけて、人の悪意を引き出して遊ぶやつらのことですね。

これは私の個人的な妄想なのですが、ワグナスはこうした妖精的な性質に、影響を受けてしまったのではないかと思います。どういうことかというと、彼は他の七英雄にはない、さながら妖精めいた「遊び心」があるんです。

原作のワグナス決戦の舞台・浮遊城。彼に対峙するまでに長く険しく苛烈な城内ダンジョンをぬけて、ようやくお出ましとなったところでワグナスは皇帝にこう問いかけます。

 

ようこそ、我が浮遊城へ!

ここまでは楽しんでいただけたかな?

 

そう、彼は天空を行く城という大掛かりな舞台で待ち、皇帝を迎え撃ちながらも余興として「遊んで」みせる余裕風をふかせるんです。すさまじい強キャラ感の演出!(ちなみに「もう帰る」と返事をすると、本当に城のそとまで送り返してくれますw)

 

ついでにいうと、彼は人心掌握のプロフェッショナルでもあります。

ヤウダ地方の王家を巧みにたぶらかし、武人セキシュウサイと皇帝を互いにつぶしあうように仕向け、自分は空の彼方で文字通り高みの見物をしている。人間の醜さを引き出すことで勝手に自滅するように、裏で糸を引き、国を操り、思いのままに動かして笑っている。いかにも妖精モンスターの象徴的な戦い方、遊び方だと感じます。

サガステのワグナスは、はっきりそうとは表現されていませんでしたが、遊び心があり(ひらめきヘルメットのくだりは大はしゃぎでしたねw)、性格的にはいかにも真面目そうでありながら、その戦い方はどこか妖精めいていた、と思うんです。これはきっと、彼にとって誤算でした。力が暴走しないように制御はできても、妖精的な性質からまったくの無影響でいることはできなかった。

 

 

そうして妖精的な性質を得たワグナスは、人の悪意を引き出して、利用するという戦い方を無自覚のうちに身に着けてしまったのかもしれません。まあ、ものすごく回りくどいことを言っていますが、要するにどういうことかというと、つまり

「オアイーブパパの暴走って、実はワグナスがそうなるように仕向けたんじゃね?」

という。

どういうことか説明します。

 

オアイーブパパという無理だらけの装置

サガステにおいて、作劇上の無理をたったひとりでぜんぶ受け止めて消化しているキャラクターがいました。オアパパこと、オアイーブパパです。彼は行動原理が場面ごとにちぐはぐで、執着の対象がブレてしまう謎の人物でした。

しかしよくよく見ると、ブレたというより、ズレたというかんじがします。もっというと、ズラされた。

彼がもともと執着していたのは、どう考えてもワグナスでした。ワグナスと自分。ワグナスという才能にどうむきあうか。ワグナスのまぶしさ。ワグナスの有用性。ワグナス。ワグナス。お前をワシのものにしてみせるぞ。ほ~れほれ、クリームお食べ~、という、なにこの年の差BL臭すげえ、みたいな謎のこじらせパパでしたよね。めちゃ面白かった。観ているだけでワクワクでした。

ところが、ある時点からオアイーブパパの執着の対象は、ワグナス個人というよりも権力欲へシフトしていきます。ここに、ワグナスの意図が一枚かんでいるとしたら、この話はちょっと違った見え方をしてきますね。

ワグナスは王の急変をきっかけに、これをうまく利用した。

オアパパの執着を自分という個からズラして、手にとどきそうな王座への渇望にずらした。そのために、自分が「半分魔物の危険な存在」であり「社会的には許されざる者」であることをまったく否定せず「オアパパから見て立場が悪くなった弱者」であるように、もし、見せかけたのだとしたら……? 妖精的な作為によって、オアイーブパパの悪意を引き出し、からめとり、あえて自分を追放させるように、追放したくなるように、仕向けたのだとしたら……? 

自分が次元転移の実験台になるべきだという科学者としてのプライドと、

さりとてサグザーに「ワグナスを転移させた負い目」を負わせたくはなく、

では誰が? 誰なら? どうすれば、自分を、この世界から飛ばせるのだろうか、

そうだ、大神官だ。

彼の悪意を。彼の敵意を。彼の欲望を。

さらには自分の立場を。七英雄の邪悪さを。罪を。

利用のしがいがあるのではないか?

こうした思考があったかどうか、実際にはわかりません。

でも、妖精を吸収したワグナスが、悪魔的なからめ手で人心を操ろうとしていたとするなら、原作のワグナスが採用した戦略と通ずるところ大ですね。

また、正義の目的のために自分一人で罪をかぶろうというのは、

いかにも自己犠牲の精神に満ちたワグナスらしい、凜々しいリーダーシップの発露だとも感じます。殉教者の孤独と、覚悟。

 

そしてことは成り、オアパパはまんまと次元転移装置に手をかけるにいたるわけです。

 

オアイーブパパの弱さを計算できなかった悲劇

ところが、話はここで終わりません。

ワグナスは慟哭します。

泣いて、叫びます。追放に際して、彼は血の涙を流します。

なぜか。

誤算があったからです。妖精の魔性と遊び心を身に着けたのとは違う、もうひとつの誤算。

それは、オアイーブパパの弱さを計算にいれられなかったことでした。

私の見立てでは、ワグナスは本当は彼一人で旅立ちたかった。彼の策によれば、彼だけが王を殺した魔の七英雄として追放されるはずだった。

しかし、オアパパはここでさらにもう一回ブレます。ワグナスという個人に対するヘイトだったはずが、いざ追放の段になって、七英雄全体へのヘイトにシフトするんです。ここは舞台を観ていたときには、正直よくわかりませんでした。あるときは権力の至高を望んでいた一方、七英雄の排除にやっきになる、ちょっと唐突な感じ。七英雄は名声こそ得ても、王宮の政治にかかわれるわけもなく、オアパパの直接的な害にはならないはずなのに。にもかかわらず、あれほどまでに七英雄を敵視するわけとは。わからない。自分の罪がばれることをおそれてのことなのか、強大すぎる武力をもった個人におそれをなしたのか。よくわからなかったのですが、わからないなりに感じたことは、彼は弱かったということです。それも、哀れなほどに弱かった。

弱さは冷静な判断力を失わせ、論理的思考はすでになく、倫理観も壊れはて、追い詰められ、オアパパは混乱をきたします。そう、混乱。混乱しているのでもはや他者からは理解できないし、自分自身でも正体をうしなっている、意味不明の錯乱状態。

ゆえに、オアパパはもう、王座への志向も、ワグナスへの執着も、いろんなものがよくわからなくなって、ただ近視眼的に「英雄を破滅させたい」という気持ちになってしまったのかもしれません。

だから、七英雄の友情を利用した。

ワグナスを慕う者たちは、この日、この時、この場所に集まる。

まとめて追放してやろう。

ワグナスはそれを見誤りました。まさかこんなにも支離滅裂で、こんなにも浅はかで、こんなにも脆く弱い人間がいるものか、と。

自分だけが追放されればそれでよかった。けれど、そうはならなかった。オアパパの招いた煽動。誰もが混乱し、誰もが破滅願望をもった。恐怖によって混乱し。弱さによってパニックは加速し。だから、七英雄まとめて敵認定され、追放されざるを得なかったと思うと、なんだか人間のもろさ、そのリアリティがワグナスとオアパパのふたりによってまざまざと舞台に表出されたように思えてきます。

 

最後の誤算。ワグナスには仲間がいた

そして最後の誤算。妖精の魔手でオアパパを利用し、利用したつもりが計算外の弱さによって計画の破綻につながり、そして、

 

ノエルが走った。

 

一人で消えるはずの計画に、しかし「ワグナスを処刑しようとすれば全員が追放実験地点に集まるにちがいない」というオアパパの悪意が掛け合わさったことで、ワグナスが想像だにしなかった悲劇につながります。来てしまうのです。みんな。来なくてもいい。オレ一人でいく。くるな。くるんじゃない。

だけど、ワグナスの最後で最大の誤算。ノエルは来る。スービエも来る。七英雄は来る。友だから。英雄同士だからじゃない。友人として。人間として。

俺達はワグナスの呼びかけで集まり、正義を知った。

だから、いま、たとえ呼びかけられなくても集まろう。

それがワグナスの意志に反するとしても。

ワグナスは知らなかったんです。

自分がそれほどまでに愛されていることを。

自分がそれほどまでにリーダーであったことを。

彼らを英雄にし、彼らを輝かせた。

自己犠牲の果ての果ての果て、誰しもが彼を聖人だと認めていたからこそ、逆に避けようのなかった全滅エンド。

お前たちまで追放される必要はなかったのに。

お前たちまで悪とそしられるいわれはないのに。

奴らを許さない。

俺を追放する奴らを。

俺たちを追放する奴らを。

俺を愛し、俺が愛したお前たちを、悪と罵るすべての愚民どもを。

 

そんな魂の叫びが、たしかに聞こえてきました。

 

一幕ラストのあの慟哭は、おそらく生涯忘れられない記憶になります。

 

ワグナス。

誤算こそあれ、あなたは間違っていなかった。

あなたはどこまでも善で、どこまでも優しく、理想のリーダーでした。

あのワグナスでなければ、七英雄誕生の話がぜんぶ嘘くさくなる。

でも、真実だった。

真実そのものに感じられた。

はやくDVDで観たいです。

何度も観たいです。

 

 あと、殺陣だよ、殺陣!!!!

 

ワグナス、ほんとに殺陣すごかったね!!!!

あれ、中の人の中村 誠治郎さんが振り付け指導してるんだってね。

別の記事でも書いたけど、セキシュウサイ戦はホントにホントにホントにかっこよくって鳥肌立ちまくりでマジでヤバイ。言ってること、やってること、ぜんぶが最高にかっこいいの。うでまくり~~~~! 両腕がば~~~~! 回し蹴りずばーーーー! かつての日々をーー! 思い出せるやも!!! しれぬ~~~~~ううううううっっっっっ(泣) てかね、てかね、誤解を恐れずいうなら、私、男だけど、

 

中村誠治郎さんのお顔が好きです(照)

 

かっこいいのに可愛いし、あの運動神経、身のこなし、笑顔、やべえ(鼻血)

 

BSフジの特番で司会進行やってる時の中村さんが、顔が綺麗なだけのただの困ったロマサガオタで笑ったw

 

 ロマサガ愛の深さを感じたよね。最高のワグナスだった!

 

さて、浮遊城は楽しんでいただけたかな?

 

 楽しんだ

 

  ぜんぜん楽しくない

 

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